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診断と治療方法

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診断と治療方法

診断

はじめに
要約すれば、初期のファンコーニ症候群では、多飲多尿、正常血糖値であるにもかかわらず尿糖陽性、低比重尿以外異常がほとんどないと言っても過言ではありません。
そのため、ここで診断がつかない多くの獣医師は、何か他の検査の異常を探し求めてエコーやACTH刺激試験を行なおうとするのでしょう。
しかし、このような特殊な病態がファンコーニ症候群とも言えるのかもしれません。
多飲多尿、正常血糖値で尿糖陽性のバセンジーの遺伝疾患がファンコーニ症候群であるという知識を持っていることこそ重要な診断材料です。
次に行うべき検査は他のどのような検査でもなく、静脈血液ガス検査なのです。
鑑別診断は、バセンジー以外の犬種、動物では必要ですが、そのためにもまた静脈血液ガス検査が欠かせません。

まずは確認しましょう

飼い主の最初の禀告

顕著な多飲多尿
昼夜を問わないトイレの失敗
尿糖陽性(飼い主がファンコーニ症候群の知識を持ち合わせている場合)
健康診断や術前検査で発見されることもあります

診断(初期)

犬種( バセンジー)
正常血糖値及び尿糖陽性
大量の低比重尿
体重減少
顕著な飲水量増加 (多くは1〜2L/head 以上)

主な鑑別診断

糖尿病: 血糖値測定で判別可能

クッシング症候群: ACTH刺激試験は通常不要
尿糖陽性及び正常血糖値で判別可能
クッシング症候群に特徴的な腹部膨満、被毛や皮膚の変化はない

腎性糖尿: 非常に稀な疾患
バセンジーにおいては、ファンコーニ症候群の可能性の方が高く、他の犬種や哺乳類の場合は、鑑別が必要。腎性糖尿では、尿糖以外は尿中に漏出しないため、静脈血血液ガス検査でHCO3−低下が認められなければ、腎性糖尿として考え治療は特に必要ではない。


一般的な診断手順

01 一般検査
問診
体重は初期でも減少していることが多い(約1kg)
心拍数などに異常はない
明らかな飲水量増加(1回1〜2リットル以上)
皮下脱水が感知されることは少ないが、明らかな毛ヅヤの悪さが認められることが多い
02 尿検査

尿糖陽性
蛋白陽性、低比重
尿糖陽性のため感染しやすく、細菌陽性のこともある
多くは尿pHは酸性だが、進行するとアルカリ尿となることもある
アルカリ尿の結果結石が認められることがある

尿糖陽性について
通常血中の糖が250〜300mg/dl以上の高血糖にならなければ、正常な尿細管機能が維持されている場合、尿糖は検出されない。ファンコーニ症候群の場合、多飲多尿を主訴に動物病院を訪れる時、すでに尿糖陽性のことが多いが、一方で血糖値は正常範囲内を示し糖尿病はその時点で排除される。
病気の進行に従い、さまざまな電解質バランスが乱れることにより、動物はストレス状態下になり、若干の高血糖を認めることはある。糖尿病との鑑別は、通常ほとんど必要ないが、どの程度の高血糖かによって総合的に判断すべきであり、心配な場合はフルクトサミン、糖化アルブミンなどの測定を併用するなど糖尿病と誤診しないように注意を払うべきと考えている。
しかし、2012年のプロトコールのコメントでは、若齢発症例とともに、尿糖検出前に重炭酸(HCO3-)漏出例が発見されるなど、これまでのような典型的な発病の確証としての尿糖陽性及び正常血糖値が必須とは言えなくなってきている。バセンジーであれば、常にファンコーニ症候群の疑いを持たねばならなくなってきた。
コンタクトを取ってきたあるバセンジーの飼主は、亡くなるまで尿糖の検出が不安定(尿糖陽性の時もあれば、陰性の時もあった)であったため、最後まで主治医の元でファンコーニ症候群とは確定されなかったということも聞いている。(多飲多尿はあったが、血液ガス検査は受けていない)
しかし、おそらくこれもまた非典型的な発症パターンのファンコーニ症候群であったと考えられる。

03 血液検査

バセンジーには高PCVは珍しくない
白血球などには異常はない
尿糖陽性だが正常範囲血糖値
尿中に漏出するTP, Alb, K, Caは低下傾向
糸球体に異常がなければ、BUN, Creに異常は認められない
理由はわからないが、バセンジーには高ALPが多い
Pもまた尿中に露出するが著者の経験では、P低下を示したパセンジーは1例のみで、どちらかというとBUN、Creが上昇する糸球体腎症を起こした際には血中Pもまた上昇する。

04 最終
チェック

以上の検査で、
正常血糖値及び尿糖陽性、バセンジー、PUPD(多飲多尿)

  • 正常血糖値
    尿糖陽性
  • パセンジー
  • PUPD

この3つが揃っていれば、ファンコーニ症状群と診断しても良いと思われる。
バセンジーでなければ、確定診断に静脈血液ガス検査などをおこない、前述の鑑別診断が必要。

次のステップとしては、バセンジーのファンコーニ症候群と診断していても、重炭酸ナトリウム投与量の必要性または投与量確定のため静脈血血液ガス検査が必要となる。

血液ガス検査(静脈血)
進行例(尿中に重炭酸喪失例)では、HCO3-, pH, BEが低下する。

治療方法

はじめに
米国の医師 Dr. Steve Gontoが人のファンコーニ症候群患者の治療に基づいてバセンジーのためのファンコーニ症候群治療プロトコールを作成公開し、2003年版がインターネットで無償公開されていました。今年後半になり2015年改訂版が公開され、プロトコールのセクションで日本語訳とともに掲載しているので、是非参考にしていただきたい。
現在、アメリカのゴントー医師によるプロトコールは、30年以上にわたり、多くの獣医師の協力も得て、数千頭のファンコーニ症候群の動物に関する知見を集積、分析して改良されており、著者も当初2003年版のプロトコールを参考に治療を行ってきました。安楽死をほとんど望まず最期まで看取りたいという日本人の国民性、日米での犬の飼い方の違い、サプリメントの市販状況の違いなど日米での文化の違いなどに基づく日本ならではの応用もまた必要であると考えています。

  まず重要なことはバセンジーの場合は遺伝疾患のため、完治は望めないということです。
目指すべきゴールは良好なコントロールであり、完治ではありません。Gonto Protcolを検証した獣医師らにより、良好にコントロールされた場合、罹患犬と非罹患犬との間に寿命の差はなく、QOLも良好であると報告されています。

また、ファンコーニ症候群は水分、蛋白を含め多くの栄養素が尿中に喪失してバランスを崩す疾患であり、蛋白を制限しなければならない腎糸球体部分の疾患とは根本的に異なるという特性を理解し、治療、ケアにあたらなければ、かえって状態を悪化させることになります。
初期のファンコーニ症候群(尿細管障害)といわゆる腎不全(糸球体疾患)とは全く正反対の治療といっても過言ではありません。

また何らかの化学物質や感染症が引き金となって後天的に誘発されたファンコーニの場合は、原因物質に暴露され尿細管のダメージがおこった直後が最も重篤であるため、徐々に進行していく遺伝性ファンコーニと異なり、多くは突然起こり、初期に最もひどい症状を示します。この命に関わるような重篤な時期をうまくコントロールできれば、その後は改善に向かう事を経験しています。時に腎性糖尿のみが残存しますが、モニターのみで治療の必要は無くなります。もちろん、尿細管のダメージの程度によるのですが、治療方法は遺伝性ファンコーニと何ら変わりません。海外で報告されたようなチキンジャーキーなどが原因とされる後天性ファンコーニの集団発生は日本では起こらなかったようです。

下記にゴントープロトコールも参照の上、著者が日本において行ってきたバセンジーのファンコーニ症候群の治療経験から得てきた治療方法について記しています。しかし、著者も経験してきたように、一口に遺伝性のファンコーニといっても、発症年齢も、治療開始時期も、疾患のステージも、進行速度も、個々の症例によって全く違います。あるバセンジーは、血液ガス検査の結果は良いが、高窒素血症があるとか、またあるバセンジーは、他の数値は良いが、血中のリンだけが非常に低いとか、ファンコーニであるにもかかわらず初めから飲水量が他のファンコーニバセンジーより少ないという症例もありました。基本は同じでも、症状の表現方法は異なっており、その治療法は実は少しずつさじ加減が必要で、オーダーメイド式の治療戦略が必要なのです。ここには、ただプロトコールに従うだけでは成しえない、獣医師でなければできない獣医療専門的な知識と判断が必要になってくるのです。

治療に際して重要なことは

1) 治療の三原則を遵守する
尿中に喪失していく水分、栄養素は全て生きていくために重要なものばかりです。これを徹底的に補充します。

2) 代謝性アシドーシスをコントロールする
尿中に喪失する重炭酸を補充し、代謝性アシドーシスを予防、治療します。アシドーシスになると体の細胞に大きな障害を与えます。

3) 糸球体腎不全併発を防ぐ
BUN, Creが上昇し、糸球体腎不全を起こすと食欲が落ちます。食欲が落ちているのに、あまり美味しくない低タンパク食に切り替える必要があり、投薬が難しくなってきます。投薬ができない、いろいろなものが補充できない、それはファンコーニのコントロールが崩れるということを指します。糸球体腎不全によりネフロンのダメージが大きくなれば、糸球体濾過率が低下し、尿そのものの産生能力が低下します。ファンコーニはネフロンで原尿を産生後に、尿細管での再吸収ができない疾患ですから、原尿の時点で尿産生が少なくなれば、漏出していく栄養素も全体として減少し、血液ガス検査が改善するなど一見ファンコーニが良くなったかに見えます。

初期

一般状態も良く多飲多尿・尿糖陽性だが、静脈血液ガス検査によってアシドーシスを起こしていない(HCO3低下が認められない)ことが確認され、糸球体障害の併発がない場合

治療の三原則

1) 水を与える

水は欲しがるだけ与える。新鮮な水を切らさないよう常備する。
これは当たり前のようだが、ファンコーニ症候群のバセンジーの飲水量は非常に多く、排尿の失敗もあることから、排尿のトラブルを回避したいという心理が働き無意識にも飲水を制限しようとする飼い主が多い。水を飲むから多尿になるのではなく、尿細管で水分を再吸収できないために水分もまた大量に尿中に漏出する結果、尿量が増加する。飲水を制限してもあまり尿量は減らず、糸球体障害のリスクが増加し疾患は進行する。よって、水は欲しがるだけ与えなくてはならない。水を飲むことは、腎機能を守るために必要であるということを飼い主に認識してもらう必要がある。治療を開始すると一旦飲水量は減少することもあるが、疾患の進行につれて徐々に増加していく傾向がある。


2) フードを管理する

フードと言っても、ファンコーニの治療管理の中では、単なる栄養ではなく、食物として取り込んでいる栄養素は、尿中に漏出している栄養素でもあるので、フードに注意を払うのは当然のことだろう。注意点は2つ。一つは尿中に喪失するタンパク質の補給ともう一つはタンパク質を補給しつつも糸球体にダメージを与えないレベルの良質のタンパク質の補給という一見、相反するように見えることである。2015年改訂版のプロトコールによると、粗タンパク21-28%のドッグフードをファンコーニのバセンジーに与えるのが良いと記されている。さらにこれに少なくとも週1回は肉ベースの缶詰などのウェットフードを与えるように記されている。
この点は、以前のプロトコールでは、喪失するタンパク質の補充のために哺乳類の肉ベースのフードが非常に強く推奨されていたが、著者の経験上、あまり肉を多く与えると逆に糸球体にダメージを与えるのではないかと感じていた。今回のプロトコールでも、バセンジーに関しては、高品質のタンパク質の摂取、アミノ酸製剤での補給が推奨されている。


3) 総合栄養剤、ビタミン剤等のサプリメントの投与
犬用総合栄養剤
(ビタミン、ミネラルの補充)

ビタミンだけでなく、ミネラルなどいろいろな栄養素がバランスよく含まれている総合栄養剤を1日2回に分けて与える。 プロトコールでは、ペットタブプラス(PETTAB AF)が推奨されているが、日本では現在入手できないようだ。
ペットタブの方は手に入るので、最近ペットタブを処方しているが、これに限らない。
尿糖陽性で他の症状がない場合でも標準量(1錠 BID)を。多飲多尿などの症状が認められる時には、2錠BIDさらに進行例では増量も考える。
Ca/Pサプリメント
2015年版プロトコールでは、血液検査上正常値であってもCa/Pの補充を行うべきと述べている。PET TABS CFが推奨されているが、これも現在日本では入手できないようだ。
総合アミノ酸サプリメント
アミノ酸サプリメントも推奨されている。
アメリカでは人用アミノ酸サプリメントが手に入りやすいが、日本では通信販売か犬用のアミノ酸サプリメントを探したほうがよいかもしれない。
人用の総合アミノ酸製剤を週1回投与が推奨されている。

3か月に1回、血液検査と尿検査、6か月に1回血液ガス検査、体重測定を行う。できればおおよその飲水量を週2回くらい測っておく。
これはあくまで初期の段階でのスケジュールで、検査結果、症状によってはいつでも短縮変更すべきである。

多尿による頻繁な排尿の失敗は、罹患犬だけでなく飼い主のQOLも著しく低下させるため、時には失禁のケアも重要になる。著者はPhenylpropanolamine HCL:犬の尿失禁のための内服薬(Proin®)を処方している。
これは日本では手に入らない。これまではアメリカより購入可能だったが、2013年にアメリカで準麻薬指定となり、日本からの購入が現在はかなり困難となっている。

膀胱炎がある時

尿中に糖分を始め多くの栄養素が漏出しており、細菌感染は時々出会う。重炭酸が漏出すると、尿もアルカリに傾き、結石のリスクも高まるので、尿検査も定期的にモニターする。ゴントープロトコールほど膀胱炎に遭遇しないが、膀胱炎の症状がある時には抗生物質で治療する。多飲多尿のおかげで、アルカリでも結晶化しにくいのかもしれない。また膀胱内も洗い流され、細菌感染しにくいのかもしれない。細菌検出だけでなく、膀胱炎の症状もそれほど頻繁に出会ってはいないが、注意は必要である。

中期

ファンコーニがもう少し進行すると、重炭酸を含め様々な栄養素やミネラルが実際数値として不足するようになる。
治療3原則は、はすべてのファンコーニ症候群の犬において必ず行う。進行程度に応じてサプリは増量する必要がある。
以下に、症状、検査値に応じてさらに微調節が必要な場合の対処を示す。

カリウム低下が認められる時
総合栄養剤を投与していても多尿による漏出で、血中カリウム値を維持できない場合は、カリウム剤を内服で1日2回に分けて投与する。
日本では多くの飼い主が食材で補おうと試みるが、血中濃度を改善できるほどの効果が得られることは著者の経験上まれである。
一般的にクエン酸塩が代謝性アシドーシスのコントロールに有効であると知られているが、ファンコーニ症候群の場合は、協力なアルカリ源であるHCO3-の尿中喪失により、血液が酸性に傾くためカリウムの補充にもクエン酸カリウムにこだわる必要はない。
グルコン酸カリウム、クエン酸カリウム、アスコルビン酸カリウムでもカリウム保持という点では問題ないと考えるが、プロトコールではグルコン酸カリウムがすすめられている。しかし、日本では、グルコン酸カリウム錠剤が大きく、バセンジーや猫が飲み込むのはかなり困難な場合が多い。毎日のことなので、コンプライアンスのため、与えやすいもので維持する方が良いと感じている。カリウム剤を積極的に補充し始めたら、安定するまで血液検査をくりかえす。カリウム低下は様々な細胞に悪影響を与え、糸球体にも影響してネフロンを傷害することが予想される。そのためカリウムのコントロールは重要である

進行期

HCO3低下が認められる時
静脈血液ガス検査のHCO3低下によりアシドーシスが確認された時は、多くの場合、低カリウム血症も併発している。
低下しているHCO3‾値とPH、BEの値を考慮しながら、尿中に喪失しているHCO3‾を補うために、ゴントープロトコールを参照して重炭酸ナトリウム(重炭酸Na:重曹)の初期投与量を決める。1日量は必ず2分割して与える。

以下にゴントープロトコールから、重炭酸ナトリウム(重曹)投与開始推奨量を転記する。これはあくまでも開始量なので、すでに重曹投与をスタートしているときには、静脈血液ガス検査のHCO3値に基づいて調節する必要がある。

推奨される犬と猫への重曹開始投薬量
(静脈血液ガス検査に基づきファンコーニと診断された場合)

ペットの体重 重炭酸ナトリウム剤(重曹)の投与開始量
2.27kg以下 650mg BID 経口投与
2.28-4.45kg 1300mg BID 経口投与
5-15.91kg 1950mg BID 経口投与
16.36-25kg 2600mg BID 経口投与
25.45-40.9kg 3250mg BID 経口投与
41.36kg以上 3900mg BID 経口投与

ただし日本で手に入る制酸剤の重曹錠(マイラン重曹錠)は1錠500mgなので、表はあくまで参考として使っていただきたい。
錠剤は可能な限り、割らずにそのまま与える。
初回は2週間から1ヵ月後に静脈血液ガス検査で再評価し、重炭酸Naの投与量を確定する。
静脈血液ガス検査は常に重炭酸Na投与後6-8時間で行うことが推奨されている。
あくまでも尿中への喪失分を内服で補っているため、投与後どれくらいの時間で測定するかで結果は変わってくる。
重炭酸Na投与8時間後というのは、血中濃度のピークでもなく底値でもないということを覚えておく必要がある。
飼い主がカリウムや重炭酸Naを投与し忘れた時に、測定する意義はない。

Caが低下が認められる時
血中Ca濃度の判定の際、Ca2+(Caイオン)の測定でなければ、必ずAlbを同時に測定し、必要なら補正値を求める。
ファンコーニの場合、多くは低Alb血症となるため、Caの評価には補正が必要である。
Caは漏出していても、骨や歯などの貯蔵場所から血中に補充されている。真のCa低下なら、すでに体内の貯蔵場所にCaが枯渇していることを意味し、十分にCaサプリメントが投与されている場合は、吸収率をあげるために、ビタミンD3(活性型ビタミンD)を加える。
著者は現在米国ビタミンワールド社のCa600mg+VitaminD3を使用しており、血中濃度により投与量は調節している。
著者は、ファンコーニによるCa低下が原因と思われるバセンジーの脊椎骨折を数例経験しているので、全てのファンコーニの犬には基本的にCaサプリを与えるべきと考えている。

糸球体腎不全併発時
ファンコーニが無治療で経過すると、またはコントロールがうまくいっていないと、必ずと言っていいほど高窒素血症を併発する。ファンコーニの治療の可否は糸球体の機能を守ることで決まるいっても過言ではない。HCO3を補いアシドーシスを補正するのは、結果として糸球体のネフロンを守ることでもある。

初診時にすでに高窒素血症が見られる場合
ファンコーニはすでにかなり進行していると考えなければならない。
治療三原則はもちろん、静脈血液ガス検査で低下しているHCO3値の補正のための重炭酸Na剤の投与、カリウムやCaの補充が必要である。状況によっては、入院で24時間輸液により状況の改善を図る。バセンジーは状態が悪くても、点滴チューブを噛み切ったり、強制投薬に非協力的なところがあるので(それがこの犬たちの力強さでもあるが)、時にこの強さが 治療に不都合なこともある。
通常の糸球体腎不全との違いは、重炭酸を補わなければならないことだ。これはとても重要で、投与後は何回か静脈血液ガス検査で確認する。もちろんビタミンやミネラルの不足もあるはずなので、可能な限り補充を試みる。
すでに糸球体濾過率低下のため尿量が減っていることもあり、輸液量は尿量の注意深い観察により調節する必要がある。
危機的状態を脱し、一旦状況が落ち着いたら、低タンパク食で維持しながら、喪失分はアミノ酸サプリで補う。

治療中にBUN, Creが上昇してきた場合

静脈血液ガス検査は良好に維持されていても、BUN, Creが増加してくることはよく経験している。まず増加の兆しが見られたら、著者はその時点で腎処方食に変更し、アミノ酸サプリを増量している。血液検査でBUN, Creの他P, Na, K, Clなどをより短期間でモニターし、進行のスピードを確認する。処方食に変更後、良好に維持できていれば、通常のモニター間隔に戻す。
一般的に猫に比べ犬は糸球体腎不全の発生率は低く、発症してもゆっくり進行するというイメージがあるが、ファンコーニに伴って起こる糸球体腎不全は、早期に対応しないと数ヶ月単位で悪化してしまうことも珍しくない。進行すると食欲低下から、重炭酸Naなどの投薬が困難になり、そこからファンコーニのコントロールが崩れて死に至るという経験を何回もしている。

終末期

ファンコーニが適切に治療管理されていないと、来院した時にはあらゆる血液検査、静脈血液ガス検査値が正常範囲から外れているという可能性もある。もはや糸球体腎不全により尿量も減少して、ファンコーニに特徴的な多飲多尿も見られず、病気のストレスで血糖値は高めになる。。静脈血液ガス検査の値も大きくアシドーシスに傾いている。このような危機的状況でも、バセンジーは虚ろな目でも飼い主の膝の上にちょこんと座っていることが珍しくない。最初に出会った入院4日目に死亡したバセンジーもそうだった。ファンコーニ治療経験に乏しくとも、検査結果を見ただけで、生命の危機だというくらいどの獣医でもわかる。しかしそんな状態でも、点滴のチューブを何回も嚙み切り、トイレ用のシートをバリバリに破壊する。このような状態で初めて出会った時には、予後が良くないということをハッキリと飼い主に伝え、その上で治療方針を決めるべきだ。なぜなら、このバセンジーの強さゆえ、飼い主には別れの時がすぐそこまで迫っていると認識することが難しい。状況によっては、最後の時間を飼い主と共に過ごせるよう、飼い主と話し合って退院させたこともある。
長らく闘病してきたバセンジーを持つ飼い主は、この病気の行く末を知っている。大事なことは1分1秒でも長生きすることより、飼い主とバセンジーが別れを共有する時間を作ることだと著者は考える。そのため、遠方の飼い主でも出来る限りのサポートをしている。


最後に
バセンジーは飼育頭数の少ない犬種で、その遺伝疾患となるファンコーニ症候群の治療となると、なかなか2例目を経験する機会がなく、獣医師にとっては最初の治療経験を次の機会に活かす機会が少ないと思います。しかし、いったん理解すれば、できることはたくさんあります。治療を望む飼い主のために、ゴントープロトコールを参照してください。著者の経験も少しでも役に立てば幸いです。
ただ血液ガス検査は必須です。自分の施設になくとも、どこか測定できるところを探してください。救急病院や二次診療施設などには設置されている確率が高いと思います。そのような施設では、勤務獣医師が変わることが多く、継続治療が困難という話も聞いていますが、日常のコントロールさえ良好なら、血液ガス検査の頻度は多くありませんから、地元の主治医が中心で治療していくことは可能だと思っています。

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